by Kenji Shimizu

Interop Tokyo 2026 出展レポート:ミドクラが描く「グリーンAIファクトリー」の未来と、それを支える次世代ソフトウェアスタックの全貌 

こんにちは!ミドクラ編集部です。 

ミドクラは、今年6月に開催された国内最大級のICTインフライベント「Interop Tokyo 2026」に出展いたしました! 

今年のテーマは、今まさに世界中で爆発的に需要が伸びている「AIファクトリー」。私たちが現在開発を進めている最新のAIファクトリー向けソフトウェアスタックのリリースをはじめ、未来のインフラを見据えた先進的なプロトタイプ、さらには他社製アプリケーションと連携した具体的なビジネスユースケースまで、幅広く展示をさせていただきました。 

本投稿では、ブースの構築や現地でデモを実演してくれた技術開発メンバーへのインタビューをお届けします。展示の狙いや技術的なブレイクスルー、課題への向き合い方、そしてミドクラが目指す「グリーンなAIインフラ」の姿を深掘りします! 
 
Interop Tokyo 2026 
2026年6月10日(水)~12日(金) 
幕張メッセ 
Interop Tokyo 2026 

1. 開発者が「インフラ迷子」にならないために。事前検証済みスタックの思想 

―― Interop Tokyo 2026への出展、お疲れ様でした!まずは今回の出展の主な目的から聞かせてください。 

ミドクラ・清水: お疲れ様でした!今回の主な目的は、私たちが開発している「AIファクトリー向けソフトウェアスタック」を、業界のみなさまに知っていただき、実際に使ってもらうきっかけを作ることでした。 

昨今、AIインフラの需要は凄まじいですが、現場の技術者は多くの課題を抱えています。そこに対して我々ミドクラならどのようにアプローチできるかをお伝えしたかったのです。 

―― 「現場の技術者が抱える課題」とは、具体的にどういったところでしょうか? 

ミドクラ・清水: AI関連のソフトウェアスタックって、ベースとなるCUDAをはじめ、VolcanoやRayなど、非常に多くのコンポーネントが複雑に絡み合っています。これ、技術者の方なら誰もが一度は「バージョンのミスマッチで動かない」という絶望を経験しているはずです(笑)。 

環境構築だけで膨大な時間を取られ、肝心のAIアプリケーションや業務に必要なシステム開発まで手が回らない。 

―― なるほど。そこにミドクラのソフトウェアスタックが効いてくるわけですね。 

ミドクラ・清水: その通りです。本展示では、「ミドクラが事前に動作検証を完了させたソフトウェアスタックの組み合わせ」をパッケージとしてお見せしました。開発者が迷うことなく、簡単かつ迅速にAIアプリの開発環境を立ち上げて、すぐに使える形にする点に注力しました。 

ブースに来られたお客様からも、「確かにその課題でいつも苦労している」「インフラレベルからいちいち勉強し直さなくて済むのは助かる」と、大きな反響をいただきました。ベネフィットをダイレクトに理解していただけて嬉しかったですね。 

2. カタログからAIモデルを選択するだけで、インファレンス(推論)環境が自動起動 

―― 利便性の面で、他にも来場者の目を引いていた機能があったとか。 

ミドクラ・清水: はい、この機能には2つの側面があります。1つめは、バーチャルマシン(VM)やKubernetesクラスターを、AIファクトリーのダッシュボードを数クリックするだけで作成したり立ち上げられたりできます。 

 
しかしクラスターを作るだけではありません。2つめに「モデルプロバイダー」という形で、AIモデルのカタログも用意しました。ユーザーがカタログから「使いたいAIモデル(大規模言語モデル)」を選択してクラスターを起動すると、バックグラウンドでLLMのインファレンス(推論)サーバーまでがアドインとして自動的に立ち上がる仕組みです。 

―― 開発者はコンテナやAPIの設定を意識せずに、すぐLLMを使い始められるんですね。 

ミドクラ・清水: はい。AIを活用したアプリケーション開発のハードルを極限まで下げられるため、こちらも反響が大きかったです。今後も、AI開発に必要なアプリケーションやプラグインのエコシステムは拡充していく予定です。 

3. インフラを意識させない:デジタルベース社と連携した「データ分析」の実例 

―― ここまでインフラ層や自動化の手軽さについて伺ってきましたが、ブースでは「実際の企業活動にどう活かせるか」という具体的なソリューションデモも他社製品と組み合わせて展示されていたそうですね。 

ミドクラ・清水: はい、まさにそこが今回の展示のハイライトの1つです。いくらインフラが優れていても、最終的にビジネスの現場で役に立たなければ意味がありません。 

今回は、デジタルベース(DigitalBase)社のソフトウェアと、私たちのAIファクトリー向けスタックを組み合わせ、PostgreSQLの有名なサンプルデータベース「DVD Rental」を題材にした、実践的なエンタープライズデータ分析システムの実演を行いました。 

―― DVD Rentalデータベースを使ったデータ分析ですか!具体的にはどのような流れでシステムが動くのでしょうか? 

ミドクラ・清水: 一連の流れはすべて、人間が普段使っている「自然言語」での指示から始まります。 

例えば、ユーザーがシステムに対して「月次の売上高をジャンルごとに集計してください」とテキストで入力します。すると、バックエンド(ミドクラのAIファクトリー)で動いているLLMサーバーがこれを解釈し、データベースを叩くための「SQL文」を自動的に生成して返してくれます(Text-to-SQL)。これを実行するだけで、ジャンルごとの売上高が簡単に取得できます。 

―― 専門的なSQLの知識がなくても、AIが代わりにデータを引っ張ってきてくれると。 

ミドクラ・清水: その通りです。さらに、この一連の処理を「毎月頭に自動実行するトリガー」としてワークフロー化することも可能です。 

毎月自動的に最新のジャンル別売上データをデータベースから取得し、それを保存・分析しながら、LLMに対する「RAG(検索拡張生成)」のコンテンツとして自動的に埋め込む(ベクター化する)という実装までをワークフロー化して、デモでお見せました。 

―― RAGに最新の売上データが常に同期されるわけですね。最終的に、どう業務に生かされるのでしょうか? 

ミドクラ・清水: 最終的には、ユーザーがチャット画面で「最近のジャンル別売上の傾向はどうなっている?その傾向を分析して、分かりやすいレポートとして整理して出力して」と指示するだけでレポートの作成が完結します。 

RAGによって最新の売上情報が常に反映されているため、AIインフラ上のLLMサーバーが、その場で瞬時にデータを分析し、意思決定に役立つビジネスレポートとして提示してくれます。 
 
今回ご紹介したのは、RAGの自動構築やSQLによるデータ分析の一例です。DigitalBase社は、社内専用のAIエージェントをノーコードで様々な社内フローに合わせて構築ができます。また、今回の技術提携により、AIインフラ層からアプリ層までの環境をセットでご提供ができる様になりましたので、ユーザーはAIエージェントのワークフロー設計や設定に専念できるようになります。 

―― なるほど……!これだけの高度なシステムが、インフラのことを一切気にせずに作れてしまうというのが、ミドクラのソフトウェアスタックの本当の価値ですね。 

ミドクラ・清水: まさに仰る通りです。ユーザー(企業)側は、「AIインフラがどう動いているか」「KubernetesやLLMサーバーをどう立ち上げるか」といった複雑な裏側のレイヤーを一切気にする必要がありません。 

「自社の企業活動をどう分析し、どうビジネスに活かすか」という最上位の目的(フォーカスすべき業務)だけに集中してシステムを実装できる。 デジタルベース社との共同デモによって、ミドクラが提供するAIファクトリーが、単なるインフラ技術ではなく「ビジネスを加速させるツール」であることを証明できたと考えています。 

 
エンドースメント 

今回の検証では、MidokuraのKubernetesクラスターマネジメントに加え、複数の処理を安定して分散動作させながら当社のDigitalBaseを動かしていただいた点が印象に残りました。複数クラスターの管理から推論環境の起動までを一貫して扱える基盤の上でアプリケーションを動かせることは、私たちのようなアプリケーションレイヤーにとっては大規模運用において重要な部分で、今後よりMidokuraとの連携を深めたいと考えています。 

デジタルベース株式会社 代表取締役 今井康之 

4. 「ミドクラ」の名に懸けた、低消費電力な「グリーンAIファクトリー」への挑戦 

―― ミドクラという社名は「緑(グリーン)」に由来していますが、今回はまさに「環境に優しい、低消費電力なAIファクトリー」を見据えた技術出展もありましたね。 

ミドクラ・清水: 現在、AIのトレンドは大量のGPUを消費する「大規模学習」から、完成したモデルを現場で活用する「インファレンス(推論)サービス」へとシフトしています。 

オープンモデルの多様化により、大中小さまざまなモデルが公開されていますが、すべての企業/ユーザが1基の物理GPUを100%使い切れているわけではありません。そこで、今回私たちはGPUのリソースを必要な分だけ切り分ける分割機能を展示しました。 

―― いわゆる一般的なvGPU(仮想GPU)のようなアプローチでしょうか? 

ミドクラ・清水: 思想としては近いですが、特定のハードウェアやベンダー固有のvGPU技術に依存してしまうと、運用面での柔軟性が失われます。そこで今回は、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)のエコシステムに属する先進的なコミュニティベースのオープンソースソフトウェア(HAMi)を活用しました。 

これにより、特定ベンダーのハードウェアに過度に依存することなく、通常のvGPUによる分割よりもさらに細かい粒度(単位)でGPUリソースをソフトウェアにより切り分けることを実現しました。 

―― ソフトウェア技術だからこそ、より高密度にGPUを使い回せるわけですね。 

ミドクラ・清水: 物理GPUを仮想GPUとして柔軟に分割し、ユーザーごとに必要なリソースだけを効率的に割り当てられます。こうすることで、ハードウェアのアイドル時間を減らし、既存のハードウェアリソースを最大限、効率的に動作させることで、省電力化に寄与します。先ほどのデジタルベース社のソフトウェアを用いたデモのように、裏側で複数の推論サーバーやLLMを効率よく動かす際にも大きな威力を発揮すると考えています。 

5. 未来を先取るプロトタイプ:マルチデータセンター 向けAI ワークロードルーター 

―― もう1つの目玉展示、分散型データセンターを制御する「マルチデータセンター 向けAI ワークロードルーター」についても詳しく教えてください。 

ミドクラ・清水: これは今後のロードマップを見据え、その実現性を検証するために先行開発したプロトタイプです。 日本国内では、広大で電力も潤沢な土地が限られているため、今後は「地方を含めた様々な場所に、小型の分散型データセンター(DC)を多数建設して運用する」という未来が予想されます。 

そうなった時、バラバラに存在する複数のDCをどうやってインテリジェントに使いこなすか?という課題に対して開発したのが、このプロトタイプです。 

―― 具体的にはどのような仕組みでルーティングを行っているのですか? 

ミドクラ・清水: 各DCではKubernetesが稼働していることを前提としています。各DC・クラスタを監視・管理する「マネージャー」が、それぞれの拠点にあるKubernetesクラスターのステータス(負荷やリソース状況など)を定期的に監視し、スコアリング(優先順位付け)を行います。 

ユーザーがマネージャーに対して「AIのワークロード(処理)を実行したい」というリクエストを投げると、マネージャーが自動的にその時点で最適なクラスターを選別してルーティングします。 

―― グリーン(省エネ)を掲げるミドクラとして、この「スコアリング」にはどのような指標を組み込むことを想定されているのでしょうか? 

ミドクラ・清水: 真のグリーンAIファクトリーを目指す上で、私たちは「そのDCが、どれだけ環境に優しいか」という指標をスコアリングに組み込む世界を描いています。例えば再生可能エネルギー(太陽光や風力など)の利用率が高いDCのスコアを引き上げることで、ワークロードを自動的に地球に優しい拠点へ誘導する仕組みです。また、tokens/watt のような、電力を効率的に利用しているかを評価するKPIを用いることも可能性として考えられます。 

⚠️ 補足
この「再エネ情報のスコアリング」機能は、現時点では将来のビジョンを見据えたモックアップレベルの実装です。今回のデモでは実際のデータセンターからリアルタイムに再エネ利用情報を取得しているわけではありません。 

―― なるほど、未来を見据えた意欲的なプロトタイプなんですね!ブースでのデモではどのような実演をされたのでしょうか。 

ミドクラ・清水: デモでは、外部スコアに基づいたワークロード配置をマネージャーにリクエストできる、Kubernetesのカスタムリソース定義(CRD)を紹介しました。ユーザーは複数クラスターの最適化を自分で考える必要はなく、推論サービスをリクエストするだけで、マネージャーが最適なクラスターを自動的に選択し、推論サーバーをデプロイします。 

また、エンタープライズ用途ではハイアベイラビリティ(高可用性)が必須です。例えば「3つの拠点で冗長化してデプロイしたい」というリクエストを投げると、マネージャーが自動的にスコアリングし上位3つの拠点クラスターへリクエストを複製・分散してデプロイする、という動きを見せました。

「ソブリンAI」とデータのローカリティ(地域性)への配慮 

―― 各拠点に分散するとなると、データの扱いも重要になりそうです。 

ミドクラ・清水: 最近は国家や地域でデータを保護する「ソブリンAI(Sovereign AI)」への取り組みが世界中で活発化しています。 

このシステムは単に空いている場所やエコな場所でAIワークロードを実行するだけでなく、「データのローカリティ(地域性)」も考慮にいれます。「プライバシーデータを含む処理は必ず国内の指定拠点で実行し、データを外部へ持ち出さない」といったポリシー制御を可能にすることで、データ主権を確保しながら、グリーンでセキュアなAIインフラの実現に貢献します。 

6. 終わりに 

―― 最後に、今回の出展を振り返って一言お願いします! 

ミドクラ・清水: ブースでお客様のリアルな声を聞けたことで、私たちが開発しているソフトウェアスタックや、他社製アプリケーションとのスムーズな連携、拓かれたオープン技術ベースの細かいGPU分割やマルチデータセンターといった技術が、まさにこれからの時代のコアになるという確信を得られました。 

ミドクラはこれからも、開発者にとっても地球環境にとってもクリーンで扱いやすい「グリーンAIファクトリー環境」の実現に向けて、開発を加速させていきます。これからのアップデートにもぜひご期待ください!